神河救済レビュー:不敗神話の崩落と新しき神(追記あり)
2005年6月19日 ゲーム私は常々、ウィザーズ・オブ・ザ・コースト社のマジック開発チームの部屋には秘密の部屋があるということを妄想していた。
それは、アンヒンジドやアングルードのカードのフレーバーテキストなどに出てくるような部屋のようなもので、その部屋の中には使命を帯びた数人の研究員が存在し、知恵の限りをつくして常にMTGの最新エキスパンションに些細な影響を与えるための秘密組織なのである。
組織は毎日、あるカードの歴代原画の前で誓いを立てるのだ。
「世に素晴らしいカードを送り届けるために。世界の百万人のMTGプレイヤーにため息をつかせるために」それが彼らの信条である。
彼らは常にスタンダードにおいて、この彼らのシンボルである伝説のカードをベストプレイスにのしあげてきた。
それこそMTG黎明期から今日まで、この伝説のカードは常に基本セットに入り続けた。そして、そのカードはレアだった。
大多数のMTGプレイヤーは、このレアカードを見てこういうだろう。「なんて価値の無いひどいカードだ」と。
常にこのレアの上位互換版は登場し続けた、それもコモンやアンコモンで。しかしそれすらトーナメントシーンに現れることはほとんどなかった。なぜなら『対象のクリーチャーに飛行を与える』だけしかできないカードではゲームに勝つことはできないからである。
そう、この伝説のレアカードの名は「空飛ぶ絨毯」である。4マナで場に出て3マナで能力が起動、すなわち空が飛べる。(あまりの伝説っぷりに起動マナコストすら著者は記憶してない)レアなのにWe can fly.ではなくYou can fly。
これほど使い道のないカードであるから、秘密組織「クソレア製作組織」のシンボルになって当たり前である。彼らはこのカードに負けずとも劣らぬクソレアを作り続けた。(ちなみにドネイト、歯と爪を作った男はクビになったらしい)
彼らはクソレアに対して飽くなき挑戦を続けていた。ただ、見ただけでクソレアとわかるのではつまらない、長い長いテキストを読ませた上で・・・「紙じゃん!!」とMTGプレイヤーに叫ばせるのが彼らの至福の喜びであった。『運命の逆転』などはまさにこれに当てはまるだろう。強そうに魅せる、というのが彼らの腕の見せ所だったのである。
永遠のシンボル「空飛ぶ絨毯」の歴代原画の下、彼らは未来永劫クソレアを作り続ける・・・私はそう信じていた。・・・神河救済が出るまでは。
組織に内部分裂でも起こったのだろうか?あるいは組織が壊滅させられたのだろうか?・・・いや、この組織が壊滅させられることだけは絶対にない。彼らのネットワークは全米中にあるからである。ということは・・・つまりこれは組織の中で反乱が起こったのだ。
革命はインテリが始める、とは誰かが言っていたが、おそらくこの神のカードを生み出したのも彼ら理想しか求めないインテリだったのだろう。彼らが求めるクソレア像と、絨毯派のクソレア像はあまりにも違いすぎたようだ。
そして今回は不幸にも、この革新派が旧派を出し抜いた形で『神(紙)』を全世界に発表した。
もし彼らの存在が本当にあったならば、全世界のMTGプレイヤーはこの革新派をこう呼ぶだろう、『空虚派』と。
空虚自身 B インスタント
あなたの手札を捨てる
1マナ、黒、インスタント、あなたの手札を捨てる。聞こえなかった?ならば何度でも言ってあげよう。1マナ、黒、インスタント、あなたの手札を捨てる。
つまりこれが革新派が求めるニュー・グローバル・スタンダード・クソレアである。彼らは曖昧さよりストレートに、シンプルでより衝撃的にクソレアはクソレアであることを示さなければならないと考えているのだ。
このレアを見て、誰がクソレアではない、と言い切れるだろうか?いや、おそらく誰も、初心者ですら言えないだろう。それほどまでにこのレアは劇的に弱い。そう、このカードのレビューを長々とするのはおそらく全世界で私一人だろう、って少し自信を持って言えるくらいに弱い。
しかし、革新派のこの試みは・・・おそらく成功だった。そして彼らが求めるものも得られる結果となっただろう。
この紙のカードは、MTGプレイヤーに対し、「このカードはいったい何に使えばいいだろう?」と少しでも考えさせたし、このカード名も彼らの頭に深く刻まれた。
『運命の逆転』『立つか転ぶか』では決して成し得なかったことを、『空虚自身』は見事に成したのである。
今現在、歴史に名の残るワーストカードをあげるなら、『空飛ぶ絨毯』を抑えて『空虚自身』がトップに来る可能性さえ否定できない。それほどまでに、この新しい神の存在は強いのだ。
では、このカードについて少し語ってみよう。あなたの手札を捨てる。まずこの能力は神河救済のテーマである「手札が7枚以上〜」および「手札が対戦相手より多い〜」とまったくかみ合ってない。テーマがかみ合っていないだけでなく、カードアドバンテージの面から見ても・・・まったくのディスアドバンテージだ。
では、逆に「手札が無かったら生きるカード」とは?・・・考えるのがバカらしいからもう考えないことにする。とにかくこれほどまでにこのカードは弱いのだ。もうカードに対するレビューをする必要はないだろう。
問題は絨毯派と空虚派の確執である。2つに分かれたクソレア組織はラヴニカでどのような動きを見せるのか・・・もし今後、2つの組織となって今までより多くのクソレアを作って互いを牽制し競いあうようになってしまったら・・・クソレアを嘆き悲しむ我々にとってはこれから悲劇が続くことになるだろう。冬の時代が来たのかもしれない。
その証拠に、神河救済ではウラミの墓という絨毯派のクソレアがあるということを忘れてはならない。
新しき神『空虚自身』、不敗神話『空飛ぶ絨毯』の崩落・・・人々は今後革新派を支持するのだろうか?答えが出るのはラヴニカブロックが終わってからだ。
追記
ジャッジメント・デイ。それはあっという間に全世界に伝えられた。
ダメランの復活。ウルザ地形の現状維持。ヒッピーの復活。これらの報に沸き返る人々はその事実に微塵も気づいていないだろう。
「不敗神話は9版には入らなかった」
ラブニカを待つまでもなく、絨毯派は敗れ去った・・・
そう、世界は新たな時代の一歩を歩みだしたのだ。
しかし、これはまだスタートに過ぎない。今後の対立のゆくえなど誰にもわからないのだから・・・
書いてて思ったが、筆者は8版に空飛ぶ絨毯があったかどうかわからない。
それは、アンヒンジドやアングルードのカードのフレーバーテキストなどに出てくるような部屋のようなもので、その部屋の中には使命を帯びた数人の研究員が存在し、知恵の限りをつくして常にMTGの最新エキスパンションに些細な影響を与えるための秘密組織なのである。
組織は毎日、あるカードの歴代原画の前で誓いを立てるのだ。
「世に素晴らしいカードを送り届けるために。世界の百万人のMTGプレイヤーにため息をつかせるために」それが彼らの信条である。
彼らは常にスタンダードにおいて、この彼らのシンボルである伝説のカードをベストプレイスにのしあげてきた。
それこそMTG黎明期から今日まで、この伝説のカードは常に基本セットに入り続けた。そして、そのカードはレアだった。
大多数のMTGプレイヤーは、このレアカードを見てこういうだろう。「なんて価値の無いひどいカードだ」と。
常にこのレアの上位互換版は登場し続けた、それもコモンやアンコモンで。しかしそれすらトーナメントシーンに現れることはほとんどなかった。なぜなら『対象のクリーチャーに飛行を与える』だけしかできないカードではゲームに勝つことはできないからである。
そう、この伝説のレアカードの名は「空飛ぶ絨毯」である。4マナで場に出て3マナで能力が起動、すなわち空が飛べる。(あまりの伝説っぷりに起動マナコストすら著者は記憶してない)レアなのにWe can fly.ではなくYou can fly。
これほど使い道のないカードであるから、秘密組織「クソレア製作組織」のシンボルになって当たり前である。彼らはこのカードに負けずとも劣らぬクソレアを作り続けた。(ちなみにドネイト、歯と爪を作った男はクビになったらしい)
彼らはクソレアに対して飽くなき挑戦を続けていた。ただ、見ただけでクソレアとわかるのではつまらない、長い長いテキストを読ませた上で・・・「紙じゃん!!」とMTGプレイヤーに叫ばせるのが彼らの至福の喜びであった。『運命の逆転』などはまさにこれに当てはまるだろう。強そうに魅せる、というのが彼らの腕の見せ所だったのである。
永遠のシンボル「空飛ぶ絨毯」の歴代原画の下、彼らは未来永劫クソレアを作り続ける・・・私はそう信じていた。・・・神河救済が出るまでは。
組織に内部分裂でも起こったのだろうか?あるいは組織が壊滅させられたのだろうか?・・・いや、この組織が壊滅させられることだけは絶対にない。彼らのネットワークは全米中にあるからである。ということは・・・つまりこれは組織の中で反乱が起こったのだ。
革命はインテリが始める、とは誰かが言っていたが、おそらくこの神のカードを生み出したのも彼ら理想しか求めないインテリだったのだろう。彼らが求めるクソレア像と、絨毯派のクソレア像はあまりにも違いすぎたようだ。
そして今回は不幸にも、この革新派が旧派を出し抜いた形で『神(紙)』を全世界に発表した。
もし彼らの存在が本当にあったならば、全世界のMTGプレイヤーはこの革新派をこう呼ぶだろう、『空虚派』と。
空虚自身 B インスタント
あなたの手札を捨てる
1マナ、黒、インスタント、あなたの手札を捨てる。聞こえなかった?ならば何度でも言ってあげよう。1マナ、黒、インスタント、あなたの手札を捨てる。
つまりこれが革新派が求めるニュー・グローバル・スタンダード・クソレアである。彼らは曖昧さよりストレートに、シンプルでより衝撃的にクソレアはクソレアであることを示さなければならないと考えているのだ。
このレアを見て、誰がクソレアではない、と言い切れるだろうか?いや、おそらく誰も、初心者ですら言えないだろう。それほどまでにこのレアは劇的に弱い。そう、このカードのレビューを長々とするのはおそらく全世界で私一人だろう、って少し自信を持って言えるくらいに弱い。
しかし、革新派のこの試みは・・・おそらく成功だった。そして彼らが求めるものも得られる結果となっただろう。
この紙のカードは、MTGプレイヤーに対し、「このカードはいったい何に使えばいいだろう?」と少しでも考えさせたし、このカード名も彼らの頭に深く刻まれた。
『運命の逆転』『立つか転ぶか』では決して成し得なかったことを、『空虚自身』は見事に成したのである。
今現在、歴史に名の残るワーストカードをあげるなら、『空飛ぶ絨毯』を抑えて『空虚自身』がトップに来る可能性さえ否定できない。それほどまでに、この新しい神の存在は強いのだ。
では、このカードについて少し語ってみよう。あなたの手札を捨てる。まずこの能力は神河救済のテーマである「手札が7枚以上〜」および「手札が対戦相手より多い〜」とまったくかみ合ってない。テーマがかみ合っていないだけでなく、カードアドバンテージの面から見ても・・・まったくのディスアドバンテージだ。
では、逆に「手札が無かったら生きるカード」とは?・・・考えるのがバカらしいからもう考えないことにする。とにかくこれほどまでにこのカードは弱いのだ。もうカードに対するレビューをする必要はないだろう。
問題は絨毯派と空虚派の確執である。2つに分かれたクソレア組織はラヴニカでどのような動きを見せるのか・・・もし今後、2つの組織となって今までより多くのクソレアを作って互いを牽制し競いあうようになってしまったら・・・クソレアを嘆き悲しむ我々にとってはこれから悲劇が続くことになるだろう。冬の時代が来たのかもしれない。
その証拠に、神河救済ではウラミの墓という絨毯派のクソレアがあるということを忘れてはならない。
新しき神『空虚自身』、不敗神話『空飛ぶ絨毯』の崩落・・・人々は今後革新派を支持するのだろうか?答えが出るのはラヴニカブロックが終わってからだ。
追記
ジャッジメント・デイ。それはあっという間に全世界に伝えられた。
ダメランの復活。ウルザ地形の現状維持。ヒッピーの復活。これらの報に沸き返る人々はその事実に微塵も気づいていないだろう。
「不敗神話は9版には入らなかった」
ラブニカを待つまでもなく、絨毯派は敗れ去った・・・
そう、世界は新たな時代の一歩を歩みだしたのだ。
しかし、これはまだスタートに過ぎない。今後の対立のゆくえなど誰にもわからないのだから・・・
書いてて思ったが、筆者は8版に空飛ぶ絨毯があったかどうかわからない。
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